透析患者さんの身体能力
愛知県透析医会の皆さま、日頃透析医療にご尽力いただき、お疲れ様です。また、医会へのご協力に対して、心から感謝申し上げます。
毎年、この医会ニュースに原稿を書いておりますが、昨年と一昨年はコロナの話題でした。いつまでこの話題がファーストなのかと思いながら、昨年原稿を書いていました。
さて、今年はというと、現時点(2022年7月6日)ではまずまず落ち着いています。ただ、オミクロン株BA5の出現で、患者数が増加傾向にあるため、今後の状況の悪化が懸念されるところです。これまで愛知県の透析に関しては、各施設のご努力ならびに各エリアでの良好な連携のおかげで、壊滅的な状況になることはなかったと思っています。ありがとうございます。
今年度は診療報酬の改定が行われましたが、透析領域では運動リハビリテーションに関して算定が可能となりました。内容の詳細は太田先生に譲りますが、算定条件の問題など、様々なご意見が飛び交っています。
ただ、透析患者さんが筋力を維持することは、極めて重要なことです。2018年に日本透析医学会が調査した結果によると、60~74歳で約11%、75歳以上で25%の患者で50%以上の臥床あるいは終日臥床となっています。また比較的 若年層であっても60%以上で運動習慣がほとんど無いと示されています。もちろん、この要因は患者さんの高齢化ならびに合併する心疾患あるいは脳血管障害による影響が大きいと言えますが、運動することを勧めたり、運動する機会を提供したりすることで、少しでも機能を維持することを促すことは、透析医療者にとっては必要なことと思います。
今回の日本透析医学会総会・学術集会において、腎不全総合対策委員会企画のシンポジウムがあり、透析患者のリハビリについて話す機会がありました(個人的には、島野先生はじめ五条川リハビリテーション病院のスタッフにずいぶんお世話になりました。ありがとうございました)。世界各国で運動に関する重要性が認識され、様々な学会や団体から、リコメンデーションやガイドならびにガイドラインが出されていることを知りました。わが国からは、日本腎臓リハビリテーション学会からもガイドラインが出されています。しかしながら、患者毎でできることは当然、十人十色なので、これを参考にしながら、目標設定をしてテーラーメイドしていくことが必要だと感じました。
昨年の透析医会ニュースにも書きましたが、2019年から年1回愛知県透析実態調査を行っています。会員の皆さまにも多大なるご協力をいただいております。愛知県下の透析患者さんの居住地の分布や地域別の通院状況や介護認定取得状況を調査することで、災害時の対応などに利用される予定です。約1万8千人の患者さんの情報を得ています。その結果、施設送迎による通院患者さんが40%であることがわかりましたが、名古屋市などの都市部の方が高率でした。この割合は新型コロナ感染パンデミックの前後で変わりませんでした。透析患者さんの身体能力を落とさないためには、なおさら、自宅でできる非監視下の運動を促していくべきであると感じる次第です。
今後ともよろしくお願い申し上げます。(令和4年7月6日)