会長挨拶

愛知県透析医会の皆さまへ







愛知県透析医会 会長
稲熊 大城

愛知県透析医会の皆さま、日頃透析医療にご尽力いただき、お疲れ様です。また、医会へのご協力に対して、心から感謝申し上げます。

世界では紛争と分断が顕著となり、特に最近ではホルムズ海峡をめぐる情勢がめまぐるしく変わり、その都度一喜一憂していましたが、それにも厭世観に近いものを感じるようになりました。今のところ、透析医療の現場には大きく影響していませんが、今後不透明です。

さて、毎年日本透析医学会から発刊される「わが国の慢性透析療法の現況」では、2024年末現在の患者数は337,414人であり、3年連続で前年よりも減少していることが示されました。保存期の慢性腎臓病中心に診療に携わっている人間にとって、透析患者が減少することは望ましいし、それを治療の目的にしています。透析患者数の減少が、保存期の治療がよくなった効果はもちろんあるでしょうが、おそらくそれほど単純なものではないように思います。確かにレニンアンギオテンシン系阻害薬、SGLT2阻害薬の積極的使用、IgA腎症に対するステロイド薬ならびに扁桃摘出、糖尿病に対する新規薬剤の登場など、20年以上前と比較すれば、雲泥の差で腎保護効果の証明された治療が実施されるようになり、この現象に貢献していると考えられます。新規透析導入患者数は4年連続で減少している一方で、死亡数はほぼずっと右肩上がりで、ついに2024年末には導入患者数を上回りました。新型コロナウイルス感染症のパンデミック後もこの傾向が 持続しており、高齢化と特に心血管合併症が、これに深く関与していることは想像に難くありません。またCK(Conservative kidney management)という選択肢が、広く知られるところとなったことも関連している可能性があります。

このような透析事情のもと、現時点でできることは、実際、目の前で透析治療を行っている患者をいかに長期にわたり、良好な状態(当然QOLを含め)に保っていくかということです。透析医療、特に血液透析の場合、クリニカルイニーシャ(日本語で、臨床的惰性や臨床的慣性などと訳されます)が起こりやすい環境といえます。週3回の通院では、その都度の変化に乏しいため、ついつい経過観察としがちです。当番医が日ごとに変わることが多いことも一因です。透析量、ドライウェイト、血圧、貧血、MBD、フットケアなどが代表的です。現代のような厳しい時代こそ、原点にもどって、患者をしっかりみていく姿勢が必要で、それがひいては透析施設の安定した継続につながると思っています。

明るい材料が少ないなかで、歴史的には様々な困難を乗り越えてきた日本の力を信じ、自らも出来ることをやっていく他ありません。今後とも愛知県透析医会はできるだけ多くの会員の方々のご意見を尊重し、会員全員で様々な課題に取り組んでいきたいと考えています。今年度も何卒よろしくお願い申し上げます。