日本透析医会便り

日本透析医会便り







愛知県透析医会副会長
太田圭洋

はじめに

日本透析医会副会長の太田圭洋です。この原稿を書いているのは7月下旬で、2026年改定が実施され1か月がたちました。

2024年末の透析医学会の統計調査の結果では、透析患者数は337,414人と対前年で6,094人の減少となっています。この減少幅は、2022年末の-2,226人、2023年末の-3,966人と比較しても大きく、透析患者数の減少スピードが加速している状況です。そのような中で行われた2026年の診療報酬改定ですが、物価上昇が続く中、例年通り厳しい内容となりました。今回の日本透析医会便りでは、2026年改定を中心に書かせていただきます。

1.2026年度透析診療報酬改定

2026年の透析診療報酬改定は、かなり厳しい改定になることも想定されていました。その理由として、財務省が病院と比較して診療所はまだ利益がでているため、診療所から病院への医療財源の移動を最後まで強く主張していたことによります。病院の経営状況が危機的であるという情報は国会議員、国民に伝わっていましたが、診療所に関しては、まだかなり余裕があるとの主張が意識的になされました。特に、維新が連立政権に入ったことから、現役世代の負担軽減という方向性は揺るぎない状況になる中、大幅な医療への財源投入は、物価や人件費が上昇している中でも困難な状況になっていました。2025年夏に某医系議員に伺った際にもそのような雰囲気があり、維持透析は診療所が中心に行っている医療と認識されていることから、診療所から財源を捻出することになった場合、透析点数の大幅な引き下げにつながる可能性が高い状況でした。

2026年改定にむけ日本透析医会は、議連や保険局医療課に対して、さまざま働きかけを行うことで、透析医療機関の経営への悪影響を軽減する活動を積極的に行ってきました。今回の改定では人工腎臓技術料が20点の引き下げとなりましたが、これは新設された腎代替療法診療体制充実加算20点を算定できれば、実質引き下げなしというところまで持っていくことができました。この加算に関しては、さまざま施設基準が求められていますが、令和10年5月31日まで(4)の経過措置が設定されたことから、2年間は普通の透析医療機関は減点を免れることができる内容になったと思われました。

算定要件の(4)では「ア 在宅自己腹膜還流指導管理料を過去1年間で24回以上算定」か、または「イ 腎移植について、患者の求めに応じて適切に相談に応じており、かつ、腎移植に向けた手続きを行った患者が前年に2人以上」のどちらかの要件を満たすことが求められます。当初、イに関しては、導入期加算に関しての令和2年の疑義解釈通知において、「「腎移植に向けた手続きを行った患者」の定義として、「臓器移植ネットワークに腎臓移植希望者として新規に登録された患者」と記載されているが、臓器移植ネットワークに腎臓移植希望者として登録後1年以上経過し、当該登録を更新した患者についても 「腎移植に向けた手続きを行った患者」に含まれるか。(答)含まれる。」との解釈が過去に出されており、移植登録更新患者が2人いれば要件を満たす、と考えられていました。日本透析医会も、その解釈が準用されると判断し、会員にはそのように説明してきました。

しかし本年6月26日に発出された、疑義解釈通知その9の問8において、更新患者は数に含まれないとの解釈が示されました。透析患者の高齢化が進行している中、新規の移植登録患者を2人以上コンスタントに確保できる透析医療機関は全国で100施設にも満たないと考えられており、次回改定までに、この疑義解釈の変更を医会としての最優先事項として厚労省へ働きかけていくことになります。この診療報酬算定上の疑義解釈に関しては、どこかの医療機関から厚生局に問い合わせが行われたことがきっかけと考えられますが、各医療機関からの疑義の問い合わせに関しては、解釈が不利になる可能性のある疑義に関しては、極力慎重に対応いただきたいと思います。

本改定では、大規模施設を狙い撃ちした減算も中医協において議論されました。月の人工腎臓算定回数が2,500回を超える医療機関に関しては、効率性の区分のより低い点数の区分に分類しようとの事務局の提案に対して、中医協において医療側は真っ向から反対し、その後のさまざまな働きかけにより、この減算を食い止めることができました。これは日本透析医会の本改定における最大の働きであったと思います。

シャントPTAに関しては、透析患者数が減少している中で、算定回数が増え続けていること、および地域差が非常に大きいことが中医協で問題視されました。その結果、初回のPTAに関しても、シャント血流400ml以下または血管抵抗指数(RI)が0.6以上でない場合には、12,000点から9,840点に減算されることとなりました。短期滞在手術等基本料1の見直しとともに、シャントPTAを行っている医療機関には、非常に厳しい改定となりました。

PDに関しては、基幹病院が地域の透析医療機関に患者管理を任せやすくなるよう、在宅自己腹膜還流指導管理料2(1,500点)が新設されました。これがどれくらい利用されることになるかは未知数ですが、一部地域では、地域におけるPD管理が、よりスムーズになると期待されているとのことです。愛知県でどのような使われ方がなされていくのかは、しっかり見ていく必要があります。

今回の改定では、堀川恵子氏が執筆した「透析を止めた日」の影響も大きかったと思います。この本の内容に関しては、一部、納得しがたいところもありますが、この本を取りあげた自民党の議員の先生の働きかけの結果、非がん患者に対する緩和ケアの評価の見直しとして、緩和ケア診療加算の対象に末期呼吸疾患と同時に末期腎不全患者が追加されることになりました。また在宅麻薬等注射指導管理料の対象に腎不全患者が追加されるとともに、緩和ケア病棟入院料の対象患者にも終末期の末期腎不全の患者が追加され、透析患者および保存期腎不全患者の終末期医療に関して、診療報酬上の手当がなされました。

地味ではありますが、療養・就労両立支援指導料の対象が透析患者にも拡大されたことは、何年か前からの日本透析医会の改定要望が認められた事例です。またD to P with Dの遠隔医療を評価する遠隔連携診療料の対象に慢性維持透析の患者が追加されたことも、今後の地方部の透析医療の維持につながる第一歩として医会の改定要望が通った一例です。

今回の改定では、保険医療材料の価格改定も行われましたが、ダイアライザーの機能区分分類ごとの点数は、矛盾をはらむ異常な償還価格体系となりました。今後Ⅱa型のダイアライザーの使用は全国で激減することになると予想され問題視されています。

以上、2026年改定の透析医療に関する部分を列記してきました。物価、人件費が上昇する中、また透析患者数が減少し始めた中、各透析医療機関の経営は急激に悪化してきています。今後の透析医療を守っていくためには、データに基づく理詰めの議論も重要ですが、政治を巻き込んでの働きかけも真剣に検討する時期にきていると感じます。

2.さいごに

年々、透析医療機関を取り巻く環境は厳しくなっています。しかし、透析医療に対する風当たりは、政治の世界のみならず医療界の中でも非常に厳しいものがあります。その中で改定関係者に透析医療の実情を理解いただき、適切に透析医療を行っていくことができる環境を維持していくことは決してたやすいことではありません。我々は今後、我が国の透析医療を守っていくために、さまざまな活動をしていく必要があります。

毎年、この日本透析医会だよりで書いていますが、この状況を改善していくためには透析医の団結が必要です。現在の透析医療のおかれた状況を分析し、理論武装し働きかけていく必要があることは当然ですが、実際の交渉過程では、より生々しい組織力、そしてその組織力に裏打ちされた交渉力が重要です。残念ながら、愛知県透析医会会員の約半分は、いまだに日本透析医会へ加入していただいておりません。ぜひ、日本透析医会にご加入いただき透析医の組織としての力を高め、透析医療の将来のために力をお貸しいただきたいと思います。(文責 太田圭洋)